IT人材不足という言葉をよく聞きますが、本当にそうなのでしょうか?経済産業省が発表した「IT人材の需給動向調査」によると、2020年度にはIT人材の需要は約80万人に対して、供給は約60万人と、約20万人の不足が見込まれています。しかし、この数字は一概に信じることができないという指摘もあります。
この記事では、IT人材不足の背景や原因、そして対策について、経済産業省のデータをもとに詳しく解説します。
IT人材不足の背景
IT人材不足の背景には、以下のような要因があります。
デジタル化の加速
・ コロナ禍により、オンライン化やリモートワークなど、デジタル技術を活用するニーズが高まりました。これに伴い、ウェブサイトやアプリの開発、システムの運用・保守、セキュリティ対策など、IT関連の業務が増えました。
IT技術の進化
・ AIやIoT、クラウドなど、IT技術は日々進化しています。これらの技術を取り入れることで、ビジネスや社会に革新的な変化をもたらすことができます。しかし、同時に、これらの技術を扱える専門的な知識やスキルが求められるようになりました。
IT教育の遅れ
・ 日本では、IT教育が十分に普及していません。小学校や中学校ではプログラミング教育が導入されていますが、高校や大学ではまだまだ不十分です。また、社会人になってからも、ITスキルを習得する機会や支援が不足しています。
IT人材不足は嘘なのか
一方で、IT人材不足は嘘だという意見もあります。
統計データの問題点
・ 経済産業省の調査では、IT人材とは「情報処理部門に所属する者」と定義しています。しかし、この定義はあまりにも広くて曖昧です。例えば、事務職や営業職でもパソコンを使うことは多いですが、それだけでIT人材と呼べるでしょうか?また、IT関連の仕事は多岐にわたりますが、それぞれに必要なスキルやレベルは異なります。しかし、調査ではそれらを区別せずに一括りにしています。このように、統計データは実態を正確に反映していない可能性があります。
企業側の問題点
・ 企業側もIT人材不足を訴えていますが、その背景には自社の採用や育成の問題があります。例えば、以下のような問題が指摘されています。
希望するIT人材の条件が高すぎる
・ 企業は、経験豊富でスキルの高いIT人材を求めていますが、そのような人材はそう簡単に見つかりません。また、給与や待遇などの条件も低く抑えられていることが多く、魅力的なオファーとは言えません。
IT人材の育成や教育に投資しない
・ 企業は、既存のIT人材に対しても、新しい技術やスキルを習得するための教育や研修を十分に提供していません。また、新卒や中途採用のIT人材に対しても、OJTやメンター制などの育成体制を整えていません。
IT人材の離職率が高い
・ 企業は、IT人材を採用しても、長期的に定着させることができません。IT人材は、自分のスキルやキャリアを高めるために、他社への転職を考えることが多いです。また、過重な業務や低い評価などにより、ストレスや不満を感じることも多いです。
IT人材不足の対策
IT人材不足は、単純な数の問題ではありません。IT人材の質やマッチングも重要な要素です。そのため、以下のような対策が必要です。
政府・教育機関・企業・個人の連携
・ 政府は、IT教育の充実やIT人材の需給バランスの改善に向けた施策を推進する必要があります。教育機関は、ITスキルを身につけるカリキュラムやプログラムを提供する必要があります。企業は、IT人材の採用や育成に投資し、働きやすい環境や評価制度を整備する必要があります。個人は、自らのスキルやキャリアを向上させるために、学習や転職などの機会を積極的に活用する必要があります。
・ IT人材の多様化
・ IT人材は、男性だけでなく女性や外国人も含めて多様化する必要があります。女性や外国人は、IT分野で活躍する可能性や意欲があるにもかかわらず、社会的な壁や偏見により進出しにくい状況にあります。そのため、女性や外国人に対する支援や啓発を行う必要があります。
・ IT人材の再定義
・ IT人材とは、情報処理部門に所属する者だけではありません。IT技術はあらゆる分野に応用されており、ビジネスや社会課題の解決に貢献できる力です。そのため、ITスキルを持つだけでなく、他分野の知識やコミュニケーション能力なども備えた総合的なIT。